ブラザーズ・珈琲物語6

ブラザーズ珈琲物語6

少年J君の記憶
コーヒー事業を始めて3年位経ったころだった。妻の知り合いの婦人から相談があった。長男のJ君のことであった。高校1年の一学期までは通ったが、二学期になると全く通学しなくなった。親御さんとしては心配でどうしようもないといった表情だった。学校や様々な相談所に相談しても現状は変わらない、最後は宗教にすがっても治る様子もなかった。それで、私に何とかしてほしい、お店で使ってほしいという相談であった。

学校や福祉相談、況してや宗教に相談しても解決できないことを何で私に相談するんだと心の中で思ってしまった。給料は要らない兎に角昼間、松永のもとでいるだけで安心だというのである。しかし、私とて、決して子育てに成功しているとは言い難いし自信もなかった。況してや、コーヒー事業がうまく行っているとはお世辞にも言えない状況であった。

私の性格上このような相談には弱いというかすぐ同情してしまう性質である。出来もしないのにすぐ引き受けてしまい、後で自他ともに後悔してしまうことが多いのであった。故にこれは無責任に安請け合いは禁物だと思いキッパリと断った。。。 ところが、いつもはおおらかで、明るくパワフルはその婦人が、急に困り果て泣き出しそうな顔になった。困ったなぁ~~と思い横にいる家内の顔を見た。

多分、始めたばかりの商売がうまく経営が出来ていれば良いが、青息吐息のやり繰り状態の店で何が出来る。ハッキリと断れと言うだろうと直感的に思ったのである。ところが、家内はニコニコとしながら、そりゃぁ何とかせんといかんねぇーと言ったのである。家内も子育てには苦労して、況してやダウン症の障害者である長男をケアーしながら店を切り盛りしているので、これは無理だと言うに決まっていると思ったのである。ところが、快く引き受けることになったのである。ここでまた私のまだ知らない妻の一面を見たものであった。

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