コーヒー焙煎を知らない普通の方からすれば、なんだぶた釜とは?と怪訝な思いが湧いてくる。
   
 

ブラザーズ珈琲物語12

ブラザーズ珈琲物語12
ぶた釜物語1

コーヒー焙煎を知らない普通の方からすれば、なんだぶた釜とは?と怪訝な思いが湧いてくる。

何故かと言えば、私自身が正にそうだったからである。

しかし、コーヒー焙煎を少しでも経験し又は焙煎に関心を持った者であれば、その焙煎機の名称を知らない人はいないだろう。

それ位有名な焙煎機であり、焙煎の経験者であれば一度は見てみたい、またはその機械で焙煎してみたいと思う焙煎機である・・・と思うくらいのものであった。

別名、幻のぶた釜と呼ばれ、今では日本全国で何台あるか分からない多分現役で動いているのは、30台も無いのではないかと思うのである。

はっきりと言えるのは鳥取県内では、自社以外に1台が現役で稼働している。

島根県では私がこの仕事を始める時、ずぶの素人であり、見ず知らずの者にそれも電話での質問に丁寧親切に教えてくださった松浦珈琲研究所の松浦氏、神奈川県座間市のコーヒーノートさん、今での忘れることが出来ない。

残念ながら創業以来、悪戦苦闘してきたのでこの十二年間があっと言う間もなく過ぎていった故に何のお礼もしていなかったのである。そろそろ、心からの挨拶をすべきであると思う今日この頃である。

といういう訳で、そのような希少価値があると事も知らない全くの素人がその焙煎機を持ってしまったのだった。

何故このような言い方をするかというならば、この機械のことを別名、まぼろしのぶた釜、暴れぶた釜とも呼ばれ焙煎士たちが憧れていたのである。

その理由は他の焙煎機では作ることのできない、味、つまりコーヒー独特の香り、苦味、甘味、酸味、コクなどこれらの要素が調和して旨みとなるのである。

まさに、コーヒー味のシンフォニーを体験できるのである。だから、コーヒー焙煎の経験者憧れるのであるが、これが物凄く操作が微妙で職人の焙煎に対する知識は当然であるが、コーヒー焙煎の経験による職人の技と勘の体恤であった。いくらコーヒー焙煎の教科書を読んでも分からない世界であった。

況してや、冒頭に書いた通りこの機械の製造会社は富士珈機と言い正式名称は、富士珈機製4キロ釜焙煎機である。しかし、アフターフォロー、指導など誰もしてくれないのである。その会社が現役のころは設計から製造、組み立てまで身をもって作ってこられた社長自ら、ハーレーダビッドソンに乗って年に一度は分解掃除に整備に来てくださったそうである。

正にこの機械を嫁に出したわが子のように思い、また焙煎士たちをわが弟子のように思って育てられたのだろうと感じたものである。多分パナソニック松下幸之助、シャープの早川徳次、ホンダの本田宗一郎のような、生粋のものづくり日本職人、生粋の日本人だった事は想像に難くない。

当然ながら社長亡きあとは廃業して今では、焙煎機の操作マニュアル、設計図など全くないのである。

しかし、どなたかは分からないが思い入れの深い先輩諸氏がインターネット上に記録してくださった図面を発見した時はその方に感謝したのは当然であったが、現代のハイテクに頭が下がったものである。

正に手探り状態から始まったブラザーズ珈琲焙煎悲喜交々物語であった。

今日はこれくらいにして、明日から悲喜交々を語ることにしましょう。

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